公開:2023年11月15日
フリーマガジン「Alku Tokyo」vol.3 (2023・秋)の巻頭特集では、さまざまな体験や教室を通じて、新しい”好き”を見つける提案をしています。
今回は、特集内で紹介した「はりよ 金継ぎ教室」さんに再訪して、改めて金継ぎとはどのようにして行っているか、その行程を教えていただきました。
幾度も同じ作業を繰り返し、さらに繊細さが求められるとあって根気のいる金継ぎですが、写真からその魅力を感じとってみてください。
ライフワークとして長くつきあえる金継ぎ
「金継ぎ」は、漆の樹液を接着剤として使い、欠けた器などを修繕する手法です。
お気に入りの食器を捨てることなく再生することができ、金継ぎによって何度でも蘇らせることができます。
「はりよ 金継ぎ教室」を運営している播与漆行さんでは、天然の漆を使用することで口に入っても安全かつ実用的な金継ぎの技術を学ぶことができます。
今回は、その行程の一部を紹介し、継いだ器が完成していく様子をご紹介していきます。
ちなみに播与漆行さんの教室では1クラス最大10名までということで、講師にじっくり指導してもらえる点も魅力の一つ。すでに数十年通い続けるベテランもいるとか。
大まかな行程は「下地」「塗り」「蒔絵」の3つ
「金継ぎ」と聞くと、ピシッと割れてしまったお皿の継ぎ目を接着するイメージがあります。それも間違いではないのですが、写真のようなちょっと欠けてしまった部分を埋め直す時も同じことをします。
作業工程は、大きく「下地」「塗り」「蒔絵」の3つに分類されますが、各行程の中に細かい作業が発生し、さらに何度も繰り返して完成に近づけていきます。塗り終わったら乾燥させる時間が必要ということで、次の作業が再開できるまでに数日かかる行程もあります。
細かい作業を紹介していきますので、金継ぎの世界により踏み込んでいきましょう。
下地編
「下地」の作業行程は、大きく「素地調整」「接着」「錆びつけ」「捨て塗り」「水研ぎ」を経て、次の「塗り」に移行します。
上の写真は、割れた破片を接着した後に、錆漆を盛り付ける「錆つけ」と呼ばれる作業です。接着する場所に溝ができてしまうため錆漆で隙間を埋める行程となります。この後に「捨て塗り」→「水研ぎ」と進みます。
こちらは番外編ですが、大きく欠けてしまった箇所を漆だけでなく麻布を張り込んで形作っている例です。
麻は繊維内に細かい空気の層があり、漆が乾燥したときに柔軟性を持たせる効果があるのだそうです。
塗り編
「塗り」にも、「下塗り」「中塗り」「上塗り」「研ぎ」と分かれており、それぞれに研ぐ作業が挟まれます。塗りと研ぎを何度も繰り返して、徐々に継ぐ箇所が滑らかになっていきます。
これらの行程を進めていくには、とても根気が要ることがわかります。
講師の方によると「どの作業もその人の性格が反映されるので、道具や材料の扱いで仕上がりや途中の行程の出来上がり具合に差が生まれてきます。気温や湿度など環境による条件もありますので、同じ作業でも全然変わってきますね」とのことでした。
奥が深い。
今回、生徒さんの作業を邪魔にならないように拝見させていただきましたが、接地面が細かく集中力も必要だと感じました。授業の後はグッタリしそうですね……。
蒔絵編
いよいよ「蒔絵」が最後の行程となります。金継ぎはこのあたりがイメージとしてわかりやすいところですが、これまでの地道な行程を経て完成に近づいていくことが理解できました。
「蒔絵」にも、「地塗り・粉蒔き」「粉固め」「磨き」と進み、最終的な仕上げとなります。使う材料によっては、最後の仕上げから次に触ることができるのが1ヶ月も先になるそうです。
下の写真は「粉蒔き」の写真となります。スズの粉を振りかけて余分な粉を筆で落とします。すると継ぎ目に銀のラインが残るというわけです。
魚の鯛の歯を加工して作られた磨き用の工具で擦っていくと光沢がでます。
粉の色や材質で器に似合う仕上がりを選ぶことができます。さらに仕上げの手法によって好みの器ができあがるのが金継ぎの最大の魅力ではないでしょうか。
今回は、松田環先生のクラスにおじゃましました。みなさん友人同士のような空気感で穏やかな雰囲気が印象的でした。
漆を用いた修繕方法は、縄文時代にはすでに確立されており非常に歴史の深いものです。金継ぎを知れば知るほど先人の知恵に驚くことばかり。
「お気に入りだけど欠けた器があって捨てるのがもったいない」という方に、金継ぎはピッタリだと思いますので、ぜひ新しい扉を開けてみてください!
施設情報
- はりよ 金継ぎ教室
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住所
台東区台東3-41-4 加藤ビル3F
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TEL
03-3834-1528
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営業時間
10:00〜16:00
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開講日
ウエブサイトのカレンダーを参照
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URL
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AlkuTokyo編集部
東京メトロで発行するフリーペーパー『Alku Tokyo』、WEBサイト『AlkuTokyo.Web』の編集部です。毎日、東京をおもしろく駆け回っています。
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※本記事内の情報は2023年11月15日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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